第1章 家出、失踪のきっかけとは?

警察庁の統計によれば、平成16年に警察が受理した家出人捜索願の件数は、約9万5千人といわれ、1日に約260件もの捜索願が出されていることになります。しかし、この数字は、警察が受理した件数であり、捜索願が出されていない数も含めれば、20万件を超えるといわれています。

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これほどまで多くの件数には驚かされます。
では、いったいどうしてなのでしょうか?
家出・失踪をするには、必ず何らかの原因やきっかけがあるはずです。

「家出」は、本人が戻らない意思を持って家を出たケースです。一方、「失踪」は、長期間にわたり生死が不明のまま、行方がわからないケースで、事件に巻き込まれた危険性も考えられます。

余談ですが、「失踪者」という言葉は、主に失踪宣言を受けた者に対して使われるので、家出ではないが行き先がわからない場合は、「行方不明者」と表現するのが正式な呼び方となります。

しかし、いずれにせよ、ある日、突然、あなたの目の前から、大切な家族が消えてしまうことには変わりありません。

そこで、はじめに、山田彰男さん・26歳(仮名)の事例をもとに、家族がいなくなったときに、あなたがやるべきこととやってはいけないことを見ていきましょう。尚、登場人物はすべて仮名となっています。

また、本文中、「失踪の場合」「家出の場合」というように、家出と失踪を区別して説明するとき以外は、失踪の場合も「家出」として表現してありますので、その点のみ注意して読み進めてください。

友人からの電話

彰男さんの友人からの電話

関西出身の彰男さんは、東京の大学を卒業すると、そのまま都内にオフィスのある会社に就職し、アパートでひとり暮らしをしていました。

ある日、彰男さんの実家に1本の電話がありました。
「彰男君の友人で川島と申します。彰男君、そちらに帰っていますか?」
電話に出た彰男さんの母・洋子さん(52歳)は、「いいえ、帰ってきてはいませんが」と答えました。

しかし、友人の様子を変に思った洋子さんは、すぐにこう言いました。
「彰男に何かあったんですか?」

すると、川島さんはこう答えました。
「実は、3日ほど前から彼と連絡が取れなくなったのですが・・・。」

洋子さんが詳しく事情を聞くと、友人の川島さんは、普段はメールや電話で彰男さんと毎日のように連絡をとっていたそうです。

しかし、3日ほど前から連絡が取れなくなり、心配になって彰男さんのアパートを訪ねたところ、ドアポストには3日分の新聞が刺さったままになっていたそうです。

不審に思いドアフォンを鳴らしても返事はありません。

「車ででかけたのかな?」と考えた川島さんは、彰男さんの自家用車が止めてある、アパートのすぐ隣にある駐車場へ行ってみました。
彰男さんの車はありませんでした。

「実家にでも帰ってるならいいんだけど・・・」
川島さんはそう思いながら、以前に彰男さんから聞いていた実家の電話番号に連絡をとってみることにしたのです。

母親の洋子さんは、ご主人が戻られるとすぐに、川島さんから聞いた状況を詳しく話しました。

ご両親は相談し、とりあえず川島さんから連絡をもらった翌日、まずは単身で母親の洋子さんが彰男さんのアパートに向かい、父親の浩さんは弊社に連絡をされ、私は相談を受けました。
母親の洋子さんは、彰男さんが住んでいるアパートに着くと、注意深く部屋の中を観察しました。

しかし、置き手紙や行方がわかりそうなものは見当たりませんでした。
洋子さんは、すぐに私どもに連絡をくれ、部屋の様子などを教えてくれました。

携帯に無言の電話

彼の携帯に無言の電話

正式な調査の依頼を受け、私は彰男さんのアパートに向かいました。
部屋には、彰男さんの使っていた携帯電話が残されていました。
財布などの金品は残されていませんでした。

洋子さんから話を聞くと、過去にも彰男さんが家出をしたことがあることがわかりました。

家出人の中には、家出が癖になっている人もいます。
私が依頼を受けた中でも、一度家出をしたことのある人は、複数回やっているケースが多いような気がします。

洋子さんから彰男さんが行きそうな場所に心当たりがないかを聞きました。
家出人の多くは、過去に行ったことのある場所や思い出のある場所へ行くことが多いのです。

しかし、彰男さんの行きそうな場所の手掛かりはつかめませんでした。

とりあえず、彰男さんが部屋に置いて行った携帯電話を洋子さんに渡し、充電を切らせないようにアドバイスをしました。

今回のケースだけでなく、計画的にせよ突発的に家を出てしまったにせよ、家出をするには必ず大なり小なり理由はあります。

また、人間は精神的に弱っているときに、ふと「どこかに行ってしまいたい」とその場から逃げ出したい衝動にかられるものです。
彰男さんも、何かしらの理由で今の状況から逃げ出したいと思ったのでしょう。

残されたご家族からしてみれば、「もう少し待てば帰ってくるだろう」と思いたいのです。しかし、日数が経てば経つほど情報も少なくなり、友人や知人など調査に協力して下さる方の記憶も薄れてきてしまいます。

また、最近では事件に巻き込まれる可能性も非常に高いため、警察への届出を
いかに早く進められるかが重要です。

ATMから預金が引き出された!

ATMから預金が引き出された!

彰男さんの母親から調査依頼を受けて1週間後、彼の携帯に公衆電話から着信がありました。
母親の洋子さんが出ましたが、無言のまま切れました。

さらに2日後、また着信がありました。
今回も、公衆電話からの着信でした。
さらに2日後、また公衆電話から着信がありました。
洋子さんが電話に出ると、彰男さんでした。
彼は「秋田市にいる。心配しないで」とだけ言うと、電話を切りました。

すぐに調査員を秋田に向かわせました。
同時に、秋田県内の宿泊施設やサウナなどの休憩場所、ガソリンスタンドや移動手段などをリストアップし、電話による聞き取り調査を開始しました。

調査員が現地に到着すると、まずは秋田駅周辺の聞き込みを行いました。
タクシー運転手が彰男さんらしき男性を目撃していました。
今どき公衆電話を利用する人も少ないので、記憶に残っていたそうです。

現地での調査を始めて2日後、彰男さんの預金口座に動きがありました。
彼は、自分の口座から3万円を引き出していました。しかも、お金を引き出したのは、長野県内のATMからでした。

彰男さんは、この数日の間に、自宅のある東京から秋田、そして長野へ移動していたことになります。

駐車場に彼の車がないことや、お金が引き出されたATMが不便な場所にあったことから、彼が車で移動しているだろうと確信しました。

翌日、また口座から5万円が引き出されました。
前回と同じATMだったことから、彰男さんがその後も長野にいることは明らかでした。

その日から3台の車で長野市内を捜索しました。
ガソリンスタンドでの目撃情報もあり、「今夜見つかる!」と確信しました。

夜中の2時。
調査員から彰男さんの車と同じ車種のものを発見したと連絡が入りました。
私はすぐに現地に駆けつけ、遠くから車を目視しました。
運転手に気づかれないよう、車両の真後ろまで近づき、暗視スコープで車のナンバーを確認しました。
彰男さんの車に間違いありません。

すぐにご両親に連絡をしましたが、真夜中でしたので、翌朝すぐに出発すると返事をもらいました。

我々は、ご両親が到着するまで彰男さんの車を監視し、無事に翌朝、ご両親が彰男さんと対面したのを確認し調査を終了しました。

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