第2章 いなくなってから1週間までの行動 ~前編~

第1章では、彰男さんを例にあげて、いなくなってからと見つかるまでの流れを簡単に見ていただきました。

今回のケースでは、「預金口座」が発見の大きな手掛かりとなりました。

家出の原因には、家族や友人間とのトラブルや金銭が絡んでいる場合もありますし、職場での人間関係に悩んでいたなど様々です。

スポンサードリンク

しかし、早期に発見するためには、いくつかのポイントがあります。
そこで彰男さんの例をあげ、残された家族が、早期発見のためにやるべきこととやってはいけないことを、「1週間以内」「3カ月以内」「1年以上経過したとき」に分けてお伝えしていきます。

第2章では、大切な家族がいなくなってから1週間までの、あなたの行動についてまとめていきます。

その1.すぐに帰ると思わないこと

大切な家族がいなくなったことがわかったとき、あなたはどんな行動をとると思いますか?

 とりあえず2~3日様子を見る
 帰ってくるまで待ってみる
 すぐに警察に捜索願を出す
 友人などに手当たり次第に連絡をする

意外と多いケースが「しばらく様子を見る」です。

「明日になればケロッとして帰ってくるだろう」
「そのうち電話でもかかってくるはず」

もちろん、何日かして帰ってくれば、それが一番です。
しかし、すぐに帰ってくるだろうと思う気持ちと同じくらいに、「すぐに帰ってこないかも知れない」ということも考える必要があります。

「帰ってくるだろう」と楽観的に考えてしまうことで、いざ探し始める段階になって、必要な情報を軽視してしまうことになりかねません。

「もしかして・・・」と思ったら、まずは帰ってこないかも知れないことを想定して動くことが重要です。

まずは、次の3点について確認しましょう。

まずは、次の3点について確認しましょう。

キャッシュカードや現金を持って行ったかどうか
部屋の中で何がなくなっているか
部屋に何が残っているか

キャッシュカードや現金は持って行ったのか、所持金があるのかを知ることも大事なことです。

所持金の金額がわかれば、本人の行動範囲もある程度読むことができます。その点からも、預金通帳が部屋に残っていたら、すぐに記帳をして口座の動きも確認しておきましょう。

彰男さんの場合は、彼の母親にお願いして口座に10万円を入れてもらいました。
そして2日後、彼は口座からお金を引き出しました。
ですので、口座に残高があれば構いませんが、残高が少なければお金を入れておいてください。どうしてかといえば、口座の動きがあれば、そこから本人の足取りを探ることもできるからです。

しかし、それはあくまでも調査上の問題です。
問題は本人がお金がないばかりに、寝る場所も確保できず、食べるものにも困っていたとしたら・・・まして、今の時代、犯罪に巻き込まれる可能性もあり得ます。

「お金など入れたら、家出が長引くのでは?」
きっとあなたもそう思われるかもしれません。しかし、家出をするというのは精神的にも弱っている場合があります。

そんなときにお金がなければ、死ぬつもりはなくとも、衝動的に死を考えてしまうケースもあるのです。

ですので、本人の口座に残高がないようでしたら、すぐにお金を入れ、残高が少なくなったら足してあげてください。

もちろん、口座の動きがあれば調査に有利な情報となり、早期に発見できる可能性は高くなります。

しかし、お金を入金したことで、仮に調査が長引いたとしても、「本人に生きていてほしい」という、私の個人的な気持ちとしても、通帳の記帳をまめにしていただき、残高が少なければ口座への入金をお願いします。

彰男さんの場合には、10万円を入れた2日後に3万円、翌日に5万円が口座から引き出されました。しかも、2回とも長野県内のATMからです。

最初に預金が引き出された日から、1日3回、彼の母親に通帳の記帳をお願いしました。これは、引き出された大体の時間を把握するためです。
また、お金がないことで「死」を選ばぬための対策だと考えてください。

「部屋の中で何がなくなっているか?」「何が残っているか?」

次に、「部屋の中で何がなくなっているか?」「何が残っているか?」という点です。

もちろん、同居していない限り、本人の部屋から何がなくなっているのかを。正確に把握することは難しいでしょう。

しかし、残っている物はあるはずです。
そして、この“残っている物”から、「なぜ、これが残っているのか?」を考えることで、調査をする上で大きなヒントになる場合が多いのです。

家出の理由が明らかでない限り、この“なぜ?”という視点が非常に大切になってきます。

「なぜ、携帯を置いていったのか?」
「なぜ、大切にしていたカバンを置いていったのか?」
「なぜ、キャッシュカードを置いていったのか?」

そこには、本人からの無言のメッセージが込められていることもあります。
“なぜ?”という視点は大切にしてください。

以上の3点以外にも、彰男さんのケースのように、本人が携帯を置いて行ったのならば、携帯電話をあなたの手元に置き、充電を切らさないようにしてください。

いつ本人から携帯へ電話があるかわかりません。本人の友人・知人から電話が入る場合もあります。

また、最初に伝えておきますが、くれぐれも部屋の掃除やパソコンをやたらにいじったりしないこと。
ご家族の心理として、いなくなった家族が帰ってきたときのためにと、部屋をきれいに掃除するケースが少なくありません。

今回の彰男さんのケースも、私が彼の部屋を訪れた際に、母親の洋子さんがきれいに部屋をそうじしてしまっていました。

洋子さんの私への気遣いではありますが、部屋を掃除しゴミもきれいに捨てられていました。

事前に言っておくべきだと悔やみましたが、これでは家出をする前の生活状況がまったく見えない状態です。

レシートやお菓子の箱、弁当の空容器、はしの数、タバコの吸殻、メモなど、部屋や車に残されたものは、すべてが貴重な情報源となります。

ですので、くれぐれも部屋の掃除はもちろん、車を置いていったのならば、車の中もそのままの状態にしておいてください。

パソコンは情報の宝庫

また、パソコンも情報の宝庫です。
彰男さんの場合は、部屋にあったパソコンはバラバラに分解され、ハードディスクは外されていました。
この中には、彼にとって重要で貴重な情報が詰まっていたのでしょう。

パソコンを家出前に友人や協力者との連絡に使っていた可能性もあります。
行き先や宿泊先を事前に調べるため、サイトを検索していた可能性もあります。

我々の調査では、これらの手掛かりとなる情報を確認するため、最初にバックアップを別のハードディスクに保存してから作業を行うようにしています。

また、復元ソフトによる、ファイルの復元や隠しファイルなどの確認も必要となります。

これらの作業には、ある程度のパソコンスキルが必要となりますので、慣れない方が、見よう見真似でパソコンを操作するのは控えたほうが賢明です。

軽い気持ちでパソコンを操作して、その中に入っていた情報が消えてしまう場合もあります。

しかし、それは本人の痕跡やなぜ家出・失踪をしたかの原因がわかる大切な情報源を、あなた自身の手でなくしてしまう行為につながるのです。

「いつか帰ってくるはず」というポジティブマインドと、「帰ってこないかもしれない」というネガティブ要素に対する対策計画(ネガティブプラン)が、早期に発見するために重要なのです。

 

捜索願をすぐに出す

その2.捜索願をすぐに出すこと

大切な家族がいなくなったとき、あなたがとるべき行動を前項でお話ししましたが、では、家出もしくは失踪かもしれないと思ったときに、あなたはどのタイミングで警察へ捜索願を出しますか?
警察へ捜索願を出すのをためらう方が以外と多いのです。
その裏側には、「もう少し様子を見よう」というものと、「そんなに大げさにしなくても、ひょっこり帰ってくるかもしれない」という両面があります。

しかし、ここで考えてほしいのです。「何日か待てば帰ってくるだろう」というあなたの判断は、何を根拠にしているのですか?

「明日までに連絡がなかったら・・・」と考えず、今すぐ警察へ行き、まずは「家出人捜索願」を出してください。

捜索願は、どこの警察でも24時間受け付けてくれます。
「でも、2~3日様子を見てからでも遅くないのでは?」とまだ考えているのですか?

くどいようですが、ご本人にその気がなくとも、いつ事件に巻き込まれるかもわからないのです。

捜索願が受理されれば、警察のデータベースに登録されます。
交通取締まりや職務質問、事故にあったり犯罪に巻き込まれた場合でも、ご家族に連絡が入ることもあります。

ただし、本人が成人の場合、連絡をとるとらないは、本人の意思が優先されます。では、ここで捜索願の出し方などについて、少しご説明いたします。

■誰が出すのか?
*家出人の保護者・配偶者・親族
*家出人の監護者

■どこへ出すのか?(下記いずれか)
*家族の住居地を管轄する警察署
*家出人の住居地を管轄する警察署
*家出人が行方不明となった場所を管轄する警察署
■出すのに必要なものは?
*提出者の身分証明書(免許書・保険証など)
*印鑑(三文判でOK)
*家出人の写真(撮影から半年以内のもの)
*家出人の情報(住所・氏名・本籍・生年月日・身長・体重・人相・ケガ手術痕・既往歴・服装・所持品・職業・仕事先・家出の年月日・車両使用の場合は車両の登録番号・行き付けの店・友人関係など)

「一般家出人」と「特異家出人」

警察は捜索願を受け付けると、家出人を「一般家出人」と「特異家出人」とに分類します。

一般家出人とは、本人に家出の意思があり姿を消した場合をいい、民事事件として警察は積極的に調査や捜索活動はしないと考えてください。

ただし、さきほどもご説明したように、捜索願を出すことで、警察本部のコンピュータのデータベースに、本人の顔写真や名前などの情報が登録され、全国どこの警察でも閲覧が可能となります。

事件や事故ばかりでなく、本人が交通違反をしたり、未成年者の場合、補導をされたときなどにも、捜索願いが出されていれば、警察から連絡がくる確率が高くなります。

なお、捜索願を出すときには、同時に「生存連絡のお願い」を行っておけば、家出人が発見されたときに、必ず警察から連絡が入るようになっていますので、是非忘れないようにしてください。

そういえば、捜索願に関して強く心に残るこんな依頼もありました。
それは、家出をした本人がうつ病で悩んでいたケースです。

家出人は職場の人間関係に悩み、ここ2~3年はうつ病を患い、会社を休むことが多くなっていました。
そんなある日、「ごめんなさい」とメモを残し、家族の前から姿を消したのです。残された家族は、本人が自殺をするのでは?と心配し、とにかく捜索願を出そうということになりました。

しかし、遺書があるわけでもなく、残されたのは「ごめんなさい」のメモだけでした。これでは、捜索願を出しても、はたして警察がすぐに動いてくれるかどうかわかりません。でも、一刻も早く見つけ出さなくては、自殺しかねない状況です。

そこで、本人が家出をする際に、父親の預金通帳と印鑑を持ち出して行ったため、警察には窃盗事件として届け出をしたのです。

すると、警察は事件として捜索を開始し、1週間後に無事に見つかりました。
何とか自殺を未然に防ぐことができたのです。

ただし、このようなケースの場合、本人には前科がついてしまいます。
本人の将来を考えれば、決しておすすめできる方法とはいえませんが、「自殺をするのでは?」と心配されたご家族が、必死になって探し出そうとした想いが痛いほど伝わってくるケースです。

「特異家出人」とは

一般家出人とは違う「特異家出人」とはどういう場合を指すのでしょうか?

この場合、本人に家出の意思がなく、何らかの外的要因により行方がわからなくなった場合や、本人の生命に危険がある場合を対象としています。

たとえば、一人では遠くへ行けない幼児や痴ほう症などの高齢者、または自殺の恐れがあったり、事件や事故に巻き込まれたと推測できる場合です。

このようなケースは、一刻を争う場合も多いため、警察も積極的に捜索を行ってくれます。

■特異家出人とは?
*凶悪犯罪被害者・・・殺人、誘拐、脅迫などの被害者
*福祉犯被害者・・・少年の福祉をいちじるしく害する
*水難・転落・交通事故・・・水難、転落、交通事故など
*自殺企画者・・・自殺を企画している者
*自給無能力者・・・病人や高齢者などで自給が困難な者

特異家出人の場合は、本人が成人の場合は、警察は強制力を行使するわけにはいきませんので、発見された一般家出人と同じく、捜索願と同時に生存連絡のお願いをしておきましょう。

また、捜索願が受理されると「受理番号」が発行されますので、必ず控えておいてください。これは、捜索時に受理番号が必要となることがあるからです。

ちなみに、家出人捜索願は「公開」「非公開」に分類され、一般家出人の場合は非公開扱いとなりますが、家出人の顔写真などを載せたポスターやチラシなどを掲示したりする「公開捜査」という方法もあります。

いずれにせよ、警察への捜索願は一刻も早く出しましょう。
わからないことなどは、最寄りの警察署の「生活安全課」に問い合わせれば、詳しく教えてくれます。

「善は急げ!」

見つかる確率を上げるためにも、また、最悪の事態を未然に防ぐためにも、何の連絡もなく帰らなかったら、すぐにでも届出をすることです。
もちろん、翌日に帰ってきたら、届出を取り下げればいいのですから。

スポンサードリンク

コメントは受け付けていません。